喫茶店に入って、注文しない客についてのお話

　観光地にいる人間が、あまり観光客の悪口にあたるような話ばかり書きたくはないんだけれど、やっぱりこれはなあ。ちょっと普通じゃない気がするから書いておこう。

　ある喫茶店のマスターから聞いた話なんだけれど、例えばアベックが入ってきたとするじゃないですか。
　すると、女の方だけ注文して、男の方は何も注文しないなんていうことがあるっていうんだ。
　中高年の女性の場合でも同じ。例えば4人入ってきたとして、そのうち2人だけ注文して他の2人は何も注文しない場合があるという。
「そういう場合にどうするの？注意しないの？」
と聞くと、丁重に、「あの・・・、一応全員注文していただかないと・・・」と注意というより、お願いをするらしい。
　すると中には、
「友達が飲みたいというから入ってきただけで、あたしは別に何も飲みたいわけじゃないから」
などと平然と言う人もいるという。

　高校生か大学生ぐらいの年齢になって喫茶店を利用するようになってから今までずっと、「喫茶店に入ったら必ず全員が何かを注文すること」というのが常識だと思っていた私は唖然としてしまった。

　でももっとすごい話があります。
　これは別な喫茶店のマスターから聞いた話。
　アジサイの咲く忙しい時期に、4人組の中高年の女性客が入ってきたという。店員は当然4人分の水をテーブルに運ぶ。
　しばらくしてから、「ご注文はお決まりですか？」と店員が聞きにいくと、1人がトイレに行っているから、戻ってきて全員がそろってから注文するという。
　なにしろアジサイの咲く頃は一番忙しい時期。1組の客ばかりにずっと注目しているわけにもいかない。
　そんなわけでその店員さん、しばらく他のお客さんの相手をしたあとで、再びそのテーブルに行ったんだそうだ。
　するとなんと、もう誰もいなくなっていたという。
　要するにその4人組、1人がトイレに行きたくなり、そのためにその喫茶店に入ってきた。で、用が済むととっとと帰ってしまったってわけ。
　しかもしっかり水だけ飲んで。

　この話を聞いたときには「唖然とした」というよりはむしろ「すごい」と思ってしまった。だって、絶対に私なんかはそんな真似はできないもの。

　「近頃の若いもんは」という言葉があるが、こと、こういうマナーに関しては、どうも年齢は関係ないようだ。
　どこかで日本人の常識が狂い始めているんだろうか？