富士山　大登山記　その四

　（ 「富士山　大登山記　その三」　からの続き ）

● 遂に登山開始！

　「富士山に一度も登らぬバカ、二度登るバカ」・・・その一度も登らぬバカから脱却するために富士登山を思いついた私は、パートナーとの都合が合わずに単独登山する羽目になる。

　八王子→高尾→大月とJR線を乗り継ぎ、大月から富士急行に乗り換えて河口湖駅までたどり着いた私は、バスに乗って河口湖口の5合目までやってきた。

　富士急雲上閣の食堂で豪華な（？）天ぷらそばを食べ終えた私は、遂に登山ゲートから登山を開始したのであった。


　というわけで、1時18分、登山開始。
　私は早速富士山の急な斜面を果敢に登り始めた・・・と書きたいところなのだが、しばらくはこんな幅広で真っ直ぐな道が続く。

　この道がまた、登るどころか少し下っているのだ。
　下山時にはこれが緩やかな登り道に変貌するため、疲れ切った体に相当こたえるらしい。


　まだこのあたりは森林限界の前なので、1枚目の写真のように緑もあるし、このようによく分からない野の花も時々現れた。

　それでも富士山は日本百名山の中でも、最も花の少ない山らしい。何しろ途中からは1本の草木も生えてない山になるのだから、それも無理はない。


　時々自分の目の前を雲が駆け抜けていく。
　もう標高は軽く2300mは超えている。私はもうすでに雲の中を歩いているのだ。すごいことだ。

　ただ少し天候が心配だ。富士山は突然天候が崩れるらしいから。


　1時56分、富士山安全指導センターに到着。そこには職員がいて、安全登山のためのアドバイスを行っていた。

　職員が簡単なパンフレットを配布していたんで私も近寄って受け取ったが、彼はご覧のとおり別グループとの会話に夢中で、私とは何のコミュニケーションも取ってくれなかったのがちょっとご不満だった。

　ちなみにこの安全指導センターのある場所は一応6合目ということになっているんだけれど、富士山の何合目という言い方は実はとてもアバウトだったりする。

　実際にはこの場所の標高は2390m。出発点の5合目の標高が2305mだから、違いはわずか85mしかない。これで1合分登ったなどと思ってはいけないのだ。

　河口湖口の富士登山はここからスタートするのだ。


　安全指導センターのすぐ先に、吉田口登山道との合流点がある。安易に5合目から登るのではなく、富士吉田駅の方から、つまり0合目から登ってくる人とここで合流することになる。


　ちょうど大きな団体がいたから彼らを先に行かせようとしたらしい。私は結構この場所で休憩している。

　ここからいよいよ本当に富士山に登っていくという地点だから、再スタートを切るような気持ちでいたんだろうと思う。

● 本当の登山が始まる（6合目→7合目）

　2時10分。いよいよ7合目に向けて本格的な登山開始。


　「本格的な登山」とはいっても、しばらくは楽に車が通れそうなくらいの幅広の緩やかな道が続く。人の高さよりも高い塀がずっと山側に続いていて、かなり人工的な道だ。あまり登山をしているという感じはしない。

　下は溶岩混じりの砂利道のような感じであまり歩きやすくはないけれど、傾斜が緩やかだからそんなにきついわけじゃない。


　2時20分、馬とすれ違う。

　何てこったい！本当に馬に乗って7合目まで行く客がいるってことじゃないか！
　7合目までの料金は12,000円。リッチな人がいるんだなあ・・・。

　ところでここまでの写真、ほとんど全てEOS Kiss Digital Nで写している。

　「富士登山をするのに大きく重たいデジタル一眼レフカメラなんて」と当然思った。少しでも身軽にしなければいけないところなのだから。

　しかしコンパクトデジカメ（現在使っているのはリコーのR6）ではもう一つ信頼できない。
　昼間はいいとして、夕景や夜景、ご来光などの撮影の際に、ISO 100までしか使えない（使いたくない）コンパクトデジカメではどうしようもないだろうと考えたのだ。

　で、EOS Kiss Digital Nをメインに据えることにした。結果的にはこれは正解だった。
　結局ほとんどの写真をEOS Kiss Digital Nで写すことになったのだから（R6はむしろ動画撮影に活躍した）。

　「他にはまさかいないだろう」と思っていたのに、いた。若者が2人ほどデジタル一眼レフカメラで撮影しながら登っていた。話しかけはしなかったが、少し親近感を覚えた。


　20分ほど歩いた時点で後ろを振り返ると、今まで自分が歩いてきたジグザグの道がはっきりと見えた。その下には平野が広大に広がっている。やっぱりすごいなあ、富士山は！

　ちなみに格好はずっとＴシャツ＋長袖のオーバーシャツ。
　すでに2千メートルをとっくに超えているということもあるし、風が結構あったこともあり、そのくらいがちょうどよかった。


　3時が近づき、7合目の山小屋がはっきりと見え始める。山にへばりつくように建っている山小屋。すごい光景だ。

　このあたりで私の体に変化が表れ始めていた。

　少し頭痛を感じ出したのだ。

　この時点で、カシオのPRO TREKによると高度は2500m弱。
　こんな程度の高度でもう高山病？
　だとすると私は高山病には全く弱いことになる。

　まずいな。想定外だ。

　時折かなりの強風が吹く。山頂は荒れているのかもしれない。

　こんなにいい天気なのに、何だか暗雲が垂れこめてきたような気分に、一人私はなっていた・・・。